みなさんこんにちは、元塾講師のYOSHI-(ヨッシー)です。今回は、予備試験の口述試験について、私が行った試験対策を基に、具体的な対策方法を紹介していきたいと思います。
司法試験・予備試験の口述試験の試験内容
口述試験は、司法試験・予備試験の最終試験です。試験内容は民事と刑事の2科目の面接式試験です。
口述試験の民事は、要件事実が中心になりますが、民事訴訟の手続きや仮処分なども出題されます。
他方で刑事については、主に刑法の各論を中心に構成要件該当性とその論点が出題されます。もっとも、刑事科目の場合には、捜査と公判の手続き部分も出題されます。
またこれは、刑事と民事どちらでも出題される可能性があるのですが、法曹倫理も聞かれます。
口述試験対策の心得
口述試験の合格率は、95%ほどあり、予備試験の中では、唯一の不合格者よりも合格者の方が多い試験です。
しかし、確実に毎年、一定数の受験者が不合格になっています。はっきり言って、民事であれば誰もが言えるような訴訟物が言えなかったり、請求の趣旨が言えなければ、不合格の可能性が高まります。
また刑事では、選択する捜査令状を間違ったり、財産犯などのの基本的な構成要件が言えなければ、不合格の可能性が高まります。逆に言えば、細かい学説や受験者が一般的に知らない実務的な知識を知らなくても、それだけで不合格にはなりません。
そのため、口述試験の合格率の高さから、試験を軽くみるのは、本当に危険です。
元々受験者が、全員論文試験を突破したレベルの高い集団です。
またここで不合格となれば、また翌年予備試験を短答試験から受けなければなりません。そのため、ほとんどの受験者が必死になって、口述試験対策をしてきます。
他方で、民事と刑事は、それぞれ100点満点ですが、60点を標準として点数が加点されたり、減点されたりする試験です。そして119点が合格点となります。
そして、よほどめちゃくちゃなこと(試験中黙ってしまうなど)にならなければ、58点以下はつきません。
おおよそ試験官の誘導に従い、しどろもどろになりながら、最後まで辿り着ければ、60点は付きます。
そのため、2科目のうちどちらかが、普通に答えられれば、一方は失敗しても60点と59点の合計119点で、難なく口述試験を突破できます。
口述試験の民事の対策
まず、民事では、実体法のついては、主要な訴訟物と請求の趣旨がしっかり言えるようにしてください。要件事実の新問研のテキストにあるもののみならず、大島先生の完全講義[第三版] 民事裁判実務の基礎の上巻(通称 大島本)にある、advance部分以外(遅延損害金と代償請求は触れておくこと)の訴訟物と請求の趣旨を完璧に言えるようにしておき、要件事実も覚えておく必要があります。
advance部分(遅延損害金と代償請求を除く)については、余裕が有ればすると良いと思います。
私が口述試験を受けたときは、試験会場では大体の受験生が、大島本か辰巳の趣旨規範ハンドブックを使っていました。
次に、手続き面では、仮処分について、仮差押、処分禁止の仮処分、占有移転禁止の仮処分及び、仮の地位の仮処分の4つの要件と効果及び条文をしっかりと覚えておく必要があります。
さらに民訴のテキストで管轄と証拠収集方法(文提命令や文書送付嘱託など)、証拠となるものの具体例やその収集方法(これは主に過去問を参照)を見ておくようにしてください。
後は余裕があれば、除斥や忌避なども見ておくと良いと思います。
口述試験 刑事の対策
刑事科目の対策ではまず、主要な犯罪の構成要件要素を覚えて、当てはめられるようにする必要があります。
ここでは、基本刑法Ⅱを使い、財産犯と殺人罪、傷害罪の構成要件と主要な論点を理解して覚える必要があります。
さらに、財産犯以外であっても主要な犯罪(放火罪や名誉毀損罪など)も必ず確認するようにしてください。
また、全体の傾向としては、2日間の内、どちらかで財産犯が、残りの1日で、他の犯罪がきかれる傾向にあります(両方財産犯の場合もあり)。
特に自身が2日目が刑事で、1日目に財産犯が出題された場合には、財産犯以外で、過去問でも聞かれていない主要な犯罪(収賄や名誉毀損、放火など)も直前には確認してください。
そして、総論についてはそれほど気にすることはありませんが、正当防衛や中止犯、不能犯も聞かれることがあるので、一応見ておくと良いと思います。
次に、手続き面では、捜査部分では適切な令状選択ができるようにしてください。また逮捕や勾留の要件(これは絶対に必須)、公判手続きでは、公判前整理手続きや尋問についての刑事規則を見るようにしてください。
後は、余力があれば、司法取引についての刑訴法上の規定や被害者参加制度、秘密録音などの規定も見ておくと良いと思います。
最後に法曹倫理については、予備試験六法の最後にある弁護士職務基本規程を読んでおおよその内容を理解するようにしてください。また、その中でも重要条文のおおよその具体例も把握しておいてください。後は過去問を見ておけば、だいたい法曹倫理については、これぐらいの対策で十分だと思います。
口述試験模試について
口述試験については、どこの模試でも良いですが、基本的には受けることが必須だと思ってください。
また、近年ではコロナ対策の観点から、多くの予備校の模試がオンラインとなっています。しかし、試験本番は対面での面接試験です。やはり自宅などの慣れた場所で受けるのと、校舎などの慣れない張り詰めた空気の会場とで受けるのは全く違います。
もちろん、住んでいるエリアや時間の都合上難しい場合もあると思いますが、できれば口述試験模試は、対面で受けるようにしてください。
実際に、私は口述試験の模試は、LEC、資格スクエア、伊藤塾の3つを受け、LECについては対面で模試を受けました。
口述試験の模試は、枠が少なく、早いものでは1時間以内に全ての枠が埋まることもあります(平均してその日以内に埋まることが多い)。
また、事前にエントリーが必要な場合(辰巳の場合は7月にエントリーが必要、対象者が答練等の受講者に限られている)や、本科生や答練の受講生に優先枠がある場合もあります。そのため、できれば予備試験の論文の合格発表がある前の9月末には確認しておくことが重要です。
もし口述試験の模試を受けれないのであれば、最低でも口述試験の過去問を使い、周りにいる合格者や友達を使って口頭で答えるという練習をするようにしてください。
ちなみに、口述模試の結果はそれ程気にしなくても大丈夫です。そもそも予備試験の論文に合格しているのであれば、十分な知識はあります。ただ、その知識を口頭で表現することに慣れていないだけのことが多いです。
実際のところ、受験者の多くが口頭での試験には慣れていませんし、書くのとしゃべるのでは大きく違います。そのため、むしろ模試や友達との練習による場をこなして、話すことによって表現することに慣れることが重要だと思います。
そして、対策で最も重要なことは絶対に声に出すということをしてください。特に訴訟物や請求の趣旨などは、声に出さないと本当に本番で出てこなかったりします。
その他、私の経験
ちなみにこれは私の経験になるのですが、口述試験の対策の中で最も私が苦戦したのが事案の把握でした。
予備試験の勉強は主に短答と論文になります。そのため、事案の把握には読むことが中心となります。読むのであれば、何回も事案を読み直すことができますし、また少し分かりにくい部分が事案の中にあっても紙に書いて、冷静に少し考えれば、事案を把握することができます。
しかし、口述試験では事案が読み上げられるだけで、その中で事案を把握し、要件に事実をあてはめられることが求められます。特に刑事では民事と異なり、基本的に人物関係が書かれたパネルがありません。そのため、私は刑事については、事実を聞いただけで事案を評価し犯罪を選択し構成要件に当てはめることができるような練習をしました。
具体的には、基本刑法にある事案を友達などに読み上げて、自分が口頭で構成要件に事実を当てはめて犯罪を確定するという練習をしました。
まとめ
基本的にテキストは、民事の実体法は大島本、手続法はご自身でお持ちの、民訴のテキスト(後は仮処分のメモ)、刑事は実体法は、基本刑法ⅠとⅡ、手続法はご自身でお持ちの刑訴のテキストで十分です。後は過去問と予備試験六法ぐらいを使えれば良いでしょう。
また、手続法については、民訴や刑訴のテキストの内すべてが出てくるのではないため、ちょっとしたメモがあれば直前のチェック時に便利です。
口述試験の対策の最も重要なポイントは、必ず声を出して練習することです。
これらの情報が少しでも、みなさんの助けになれば幸いです。
最後までブログを読んでいただきありがとうございます。
Yoshi(ヨッシー)
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